オーディオブック「永遠の0」 | 対談 百田尚樹×小芝風花「永遠の0」を通じて想う「戦争」と「平和」 オーディオブック「永遠の0」 | 対談 百田尚樹×小芝風花「永遠の0」を通じて想う「戦争」と「平和」

終戦記念日である8月15日(月)の
『SCHOOL OF LOCK!』に、
『GIRLS LOCKS!』1週目を担当している
小芝風花が生放送に登場。
8月15日に発売したオーディオブック
『永遠の0』に出演した小芝風花が、
著者 百田尚樹と対談。
終戦記念日に、2人が対談を通して伝えたい、
10代リスナーへのメッセージとは?

「永遠の0」が生まれたきっかけ

小芝:百田さんは小説家になられる以前は放送作家だった、と伺いましたが…。

百田:今でもまだお笑い専門の放送作家です。28年。今もずっとチーフでやっている番組もあります。

小芝:お笑い専門の放送作家だったのに、小説家になられたきっかけはなんですか?

百田:49歳の暮れの時に。「うわっ!もう年明けたらすぐ50になるな」と思って。
昔からずっと頭の中に「人生50年」、という言葉が残っていて、果たしてこのままお笑いの放送作家として、人生終わってもいいものか、と思って、これではちょっと寂しい気もするな、というのもあって「一発ちょっと違うことやってみよう」ということで小説を書きました。

小芝:そこから書かれた、初めての作品が「永遠の0」ですよね?凄いですね!?


百田:10年前に小説書いてみよう、と思ったときに、父が末期癌で余命半年の宣言だったんですよね。私の父は、太平洋戦争に従軍し、3人の叔父もみんな参加していました。その父親も末期癌で、叔父も癌で亡くなっているんですが、「あの戦争を戦った男たちが日本の歴史から消えようとしているんだ」と。
私は、戦争が終わって10年目に生まれた子供なのですが、小さい時から親父やおじさんとかおばさんにずっと戦争の話を聞いていました。
僕は直接戦争を体験していないけれど、戦争を体験した世代から直接聞いた世代として、「この物語を次の世代へ伝えておく義務があるんじゃないかな」とそんなことを思ったんですよね。
それから、小説を書き始めて、小説が出版する1ヶ月前に親父は他界しました。親父はこの本知らないんですよね、親父に読ませたかったですけどね。

作家 百田尚樹が「永遠の0」という
作品を通じ、描きたかったこと

小芝:小さいころから戦争に関するお話は聞いていたんですね?

百田:そうですね。私が生まれ育ったのは昭和30年代ですけど、昭和30年代というのは、戦争が終わって、まだ10年ちょっとしかたってない。
ですから昔だと正月とかで親戚がみんな集まる。親戚のおじちゃんやおばちゃんが、昔のいろんな話や幼い時の思い出話をする。そうすると必ずそこに戦争の話もでていた。だって、ほんの10年ちょっとの話ですから。
子供も時から近所のおじちゃんや、学校の先生も戦争帰りがゴロゴロいたんで、普通の日常会話で戦争の話がいっぱいでるんですよ。

小芝:今だと戦争の面影なんか全然ないですよね?


百田:東京なんかまったくないですよね。僕は大阪生まれなんですが、淀川の近くには、空襲の跡なんていっぱいありました。淀川の河川敷には、B29が落とした爆弾の跡が大きな穴が開いて、そこに水が溜まって、「爆弾池」と僕らは呼んでいたのですが、いかだを浮かべて遊んでました。

小芝:10年経っていても、ですか?

百田:JRが所有する古い建物にも、機銃掃射の跡がいっぱいありました。

小芝:私も大阪なのですが、まったく想像もつかないです。

百田:戦争が終わって、十数年ぐらいの時戦争の面影はまだいっぱいありました。戦争が終わって30年くらいした後は、ほとんどなくなりましたね。

小芝:私は今10代なのですが、今の10代ってほとんど知らないと思うんです。私もおじいちゃんから少し聞いたことがあるくらいで。

百田:私の子供、親父から言うと孫には、戦争の話はほとんどしなかったんですよね。
戦争体験者は、自分の子供には戦争の話をするのですが、その下の孫には話をしないで亡くなった方も多いんですよ。
いろんな理由があると思いますが、昭和20年代・30年代では、戦争の話をしても共通の話題として、わかってもらえる世代だったんですよね。
そこからさらに50年経つと、戦争の記憶そのものが薄れている。今更つらい思い出を記憶を呼び起こして語るというのもつらい、という方もいらっしゃると思います。


百田:「永遠の0」というのは、戦後60年目の物語なんですが、自分のおじいちゃんだと思っていた人が血のつながったおじいちゃんではないことを知り、本当に血のつながっていたおじいちゃんは、宮部久蔵という名のパイロット。しかし、どんな人かまったくわからない。まだ生き残っている戦友を訪ね歩いて、「自分のおじいちゃんはどんな人でしたか」と聞いて回るという風に進行します。
ですから、この物語、宮部久蔵という人物は私にとっての父親の世代。聞いて回るというのが子供の世代。私の父の世代と私の子供の世代。
作品を通じて、私は断絶していた、この二つの世代を結び付けたかった。
ですから、「永遠の0」に出てくる二人の孫は「おじいちゃんはどういう人でしたか」という質問を通じ、「あの戦争はどういうものだったか」というものを学んでいきます。誰もがあの時代でも、死ぬために戦地へ赴くのはいやだった。ただ、それを口に出せたかどうかだと思います。
私がこの本で本当に書きたかったのは、「人は何のために生きるのか?誰のために生きるのか?人にとって家族というのはどういうものか?」ということです。

百田尚樹さんから
現代の10代へメッセージ

小芝:百田さんが思うオーディオブック「永遠の0」の魅力って、どんなところにありますか。

百田:それはやっぱりね、活字で読むのと、それから耳で聞くのはやっぱり違うでしょうね。臨場感が違いますね。特に「永遠の0」はそれぞれの証言者が一人語りですからね。宮部久蔵の戦友たちがずっと語りますよね。そうするとやっぱり、もちろん活字でも語りの活字なんですが、語りはやっぱり耳で聞く方がリアルな感じが一層発揮されるでしょうね。


百田:松乃さんを演じていて苦労ってありました?

小芝:今までは普通の台本、映像の台本をもらったら、ト書きって少ないんです。
台詞が主に書いてあって。なのでその人の気持ちとか、どういう状況にあって何を思ってこういう行動に移したのかっていうのを自分で作っていかなきゃいけないんですけど、でももう、小説にその松乃という人はどういうところに住んでて、どういう生活をしててっていうのが全部(描かれ)描いてくださっているので、役作りというか、そういうのはすごくやりやすかったなって思いました。
ただ、やっぱり今の、例えば私19歳なんですけれど、今の19歳と、昔の、戦争をやっている時代の19歳では、精神的な年齢というか、全然違うので。

百田:全然違いますよね。宮部久蔵でもあの時、亡くなった時26ですからね。すっごく若いですよね。当時の26のゼロ戦のパイロットというのはもう大ベテランですから。もうほとんどが、はたち前後なんですね。

小芝:もうだから今ぐらいの私の年齢ぐらいからってことですもんね。19、20とか。考えられないですね、もう。

百田:そうですね。一日一日が本当に凝縮したなかで生きてるので、やっぱり精神的な成長も非常に早かったと思いますね。
当時戦争で亡くなったのは、230万人いたのですが、彼らも、とにかくみんな生きて帰りたかった。
今、僕らは仕事が終わったら、家に帰って家族の顔が見られますよね。家族に会える。子供に会える。それが実はどれほど幸せなことか、みんなそれを忘れていると思います。


小芝:今では当たり前のことですが、当時は家族に会えることすら、幸せなんですよね。

百田:宮部久蔵の夢は「生きて帰る」ことですからね。ところがその夢さえも果たせなかったんですね。その夢を果たせなかった人が230万人いたんです。
自分の恋人が今日死ぬかもしれない、という恐怖感は今の僕らには想像できないですよね。

小芝:百田さんはこの作品を通じて、改めて、戦争を知らない今の10代にどんな時間を過ごしてほしいと思われてますか?


百田:私も含めて、今の人は平和な時代に生まれました。その中にあって、自分は何のために生きるのか、そして誰のために生きるのか?家族とは何か?この大事さ、素晴らしさを改めて噛み締めてもらいたいなと思います。

あらすじ

物語の主人公・佐伯健太郎は、祖母の葬儀の日に実の祖父・宮部久蔵の存在を知らされる。
零戦パイロットとして天才的な操縦技術を持ちながら、生きることに執着し、
仲間から「臆病者」と蔑まれた宮部の実像を調べようと、健太郎は彼を知る人たちを訪ね歩く。
「家族の元に帰る」ことを妻・松乃と娘に誓った宮部がなぜ特攻を志願したのか、
その謎が健太郎の手により解き明かされていく。